シモーナ・スパラコ著 「誰も知らないわたしたちのこと」

これから妊娠を望むすべてのパートナーに是非読んで頂きたい本です。

若いカップルが不妊の末、授かったわが子が超音波診断で重要な疾患が見つかり、人工妊娠中絶を決意し立ち直るまでの経過が生々しく描写されています。

クリスマスの日に人工中絶をした作者自身の体験が投影されています。…この本に書かれている主人公の女性の言葉はすべて作者の当時の心の声だと思います。

私は今まで不妊治療や妊娠・出産といったテーマの本はいろいろ読んできましたが、これほど胸が押しつぶされるような…まるで口の中に無理に砂を押し込み飲み込もうとするけど、消火しきれないような…重いテーマゆえ、生命について深く考えさせられる気持ちになった本は初めてでした。

 

人工妊娠中絶という重要な判断をパートナーと医師の意見に委ねてしまった時の彼女の言葉…

わたしは科学に裏切られ、ひとりぼっちにされた。

わたしの息子は生きるには弱すぎて死ぬには強すぎるのだ。

恐らく死産・流産をご経験された方でなくても、響く言葉なのではないでしょうか?

 

私はクアトロテストでは無脳症の確立が1/20、二分性脊椎が1/40という結果が出たことがあります。

また私は染色体異常(ターナー症候群)持ちのため、実父のすすめで出生前診断導入前にハワイで検査を受ける計画を妊娠中に計画していました。(結果的に必要なくなりましたが…)

幸いにも風邪を滅多に引かない健康ベイビーに我が息子は育ってくれていますが、もし先天性異常の診断を受けた時に私たち家族はこの問題にどう向き合っていったのか?

それは今でもわかりません。

…なので、この問題はとても他人事には思えませんでした。

 

出生前診断が日本で導入されてから約1年経ちます。高齢出産や不妊治療を経て妊娠される方が増えてきているため、出生前診断の予約回線はどこもパンク状態。

こういう状況にもかかわらず、診断結果から中絶という決断をされた方たちの声はなかなか情報として入ってきません。

中絶という決断の先にはどんな未来が待ち受けているのか…

中絶後、パートナーとこの苦しみをどうやって乗り越えるべきか?乗り越えられるのか?…

これから妊娠を望まれる方々、特に出生前診断を受けようと考えている方々に是非読んで頂きたい本です。

キンドル版は出ていないようです。