不妊治療をやめた人が、よく言うセリフ
「子どもに未練がなくなるよ」
「治療のやめ時は自然とわかるよ」
やめ時がわからず、いつか分かる時が来ると信じて、がむしゃらに治療に七年間も取り組んできました。
こんにちは、妊活イラストレーターの赤星ポテ子です。
昨年の10月の通院を最後に、7年間も続けていた不妊治療を辞めることにしました。
私が不妊治療をやめた理由
このまま不妊治療を続けていくと、大切な子どもの将来を食いつぶしてしまう
治療費の大部分は私の親からの援助でした。
父は私が息子を出産した翌日に、二人目治療の開始時期を聞いてくるくらい、私の夢を叶えてあげようと必死でした。
65歳を過ぎても現役でバリバリ働いている父が、去年の春に突発性難聴で倒れました。
面会室で数カ月 ぶりに会う父の姿に私はあぜんとしました…。
たった数 ヶ月 会わないだけでこんなに老けてしまうものかと思うくらい、まるで別人のようにやせ細っていました。
これ以上治療のことで迷惑をかけるわけにはいかないと思い、やめる意向を伝えましたが、
不妊治療の援助を続けると一点張りの父。
「お金はまだある。ウソだと思うなら通帳を見せようか?ポテ子はお父さんに気を使うことなんてないんだぞ」
私が「どうしてそんなに二人目を作って欲しいの?」と 人目を気にせず泣きながら聞くと
「子どものしたい夢を叶えてあげたいと思うのが親心じゃないか。ポテ子が二人目をあきらめることはお父さんにとっても辛いんだよ」
数万円のパソコンを買うことに躊躇している父が、何十万円もする治療費の援助を続けるなんて…。
このまま治療に没頭し続けていたら、20年後に息子に同じような言葉を私もかけてあげられるだろうか?
父がしてくれたように、 息子の夢を工面してあげられるだろうか?
父の入院は治療のやめどきを意識するきっかけになった出来事でした。
お金は治療のためではなく、家族が幸せになるために使うもの
息抜きに出かけた海外旅行もやめるきっかけを教えてくれました。
夫が転職が急に決まり、有給消化中の平日をねらって10月にグアムにいきました。
海外旅行はハネムーン以来。
結婚してからすぐに不妊治療をはじめたので、旅行はいつも千葉や茨城といった近場のエリアでずっと我慢してきました。
体外受精1回分と同じ値段で、家族で海外旅行に行けてしまう。
お金の本当の価値ってなんだろう?
出来るかもしれない可能性にお金をかけるより、家族がみんなが喜ぶことに使うべき
グアム旅行のおかげでまた一つやめる気持ちを後押ししてくれました。
これ以上治療を続けていくと、やめた後悔よりやめなかった後悔が上回る
同年代のママ友はまだ学費にお金がかからない時期ということもあってか、治療に対して割りとポジティブな言葉で励ましてくれます。
- まだ36歳でしょ?あきらめるのは早い
- 授かればお金をかけてでもやってよかったと思えるよ
- お金はなんとでもなる。妊娠は今しかできない
私に対して声をかけてくれるやさしい言葉も、私には胸に突き刺さるマイルドな暴力。
諦めにはまだ早い年齢。
でも私の卵巣機能は50代前後。
もう生理も来なくなってしまった。
不妊治療に使ったお金は700万円。
二人目が出来たら仕事ももっと頑張ればいいと問題を先送りにし、お金はなんとかなると思いながら続けてきた不妊治療。
ここのまま続けていたら、本当にどうにかなんとかなったんだろうか?
二人目治療を諦めた人のその後の生活を聞いてみた
治療をあきらめた人たちが口を揃えていう、「やめどきはわかる」という言葉。
この言葉がいつも心にひっかかり、二人目をやめた人たち20人ほどにインタビューをお願いしてみました。
特に印象的で、胸にずしりと響いたお話をしてくださった方がいらっしゃいました。
一人目のときから20年間治療を続け、数年前に治療は辞め、大学に進学する娘さんがいらっしゃるEさん。
治療を続けているときは、二人目が産まれたら産まれたで、お金はなんとかなると思っていた。
娘の進学時期に差し掛かり、治療でお金を使い尽くしてしまった今は一人っ子でよかったと思う。
なかなか人には話せないお金のことを私のために話してくれました。
息子の時期に差し掛かる15年後。我が家は大丈夫だろうか?
ちゃんと息子の将来を考えているようで私は全く想像出来ていませんでした。
このまま続けていくと授かれないままやめた後悔より、辞めなかった後悔が上回ってしまう。
息子のために兄弟をつくってあげたいという気持ちが、息子のために治療をやめないといけないとやっと決心が出来るようになりました。
妊娠出来ずに辞めた人は卒業とはいえない
不妊治療で子どもを授かって、産院に転院することを不妊治療をしている人たちの間では「卒業」と言われています。
卒業
素敵な言葉ですよね。
母子手帳は、卒業証書のように眩しい存在です。
不妊治療をやめた人たちの適切な言葉って、ありそうで実はないんですよね。
終活?
人生のエンディングを迎えるわけでもないし…。なにかしっくりくる言葉はないかと考えていたら、ピッタリな言葉が見つかりました。
「妊活中退」という選択
不妊治療で二人目を授かった人の話を聞くと、今だに羨ましい気持ちと焦りが入り混じった複雑な感情が時々湧いてきます。
治療中の方の妊娠を知る度に、「あの時もっと頑張ればよかったのかな」と心がざわつくのです。
私は学校を中退した経験はありませんが、卒業までたどり着けなかった後悔とか、今まで通院していたお金と時間が無駄になってしまった虚しさ。
親にまで迷惑をかけてやりきれなかった後ろめたさが、今でも雨雲のようにときどき降って湧いてきます。
このモヤっとした気持ちは、中退という感覚に私は一番近いような気がしました。
不妊治療の断捨離
もう二度と治療をしないと決め、治療に関するものは全部断捨離しました。
クリニックの診察券。
次の周期のためにと取っておいた薬。
頭がおかしいと思われそうですが、三年間取っておいた自分の冷凍母乳も捨てました。
二人目治療をするために早めに断乳をしましたが、長い間不妊で悩んでいたのに母乳で育てられたことがうれしくてずっと捨てられなかったのです。
赤星、妊活イラストレーターやめるってよ
長い文章になってしまいましたが、ここまで読んでくださったみなさな本当にありがとうございました。
不妊治療ではたくさんのお金を使いましたが、治療をしないと経験ができなかった貴重な体験や、かけがえのない仲間達にも出会えました。
今まで生きてきた中で間違いなく一番辛い時期をなんとか乗り越えられたのも、皆様のおかげです。
「悔いのないように最後は自分で辞めどきを決めろ」と治療に寄り添ってくたた夫。
通院であまりかまってあげられない時期も、「ママ病院がんばってね!」といつも笑顔で送り出してくれた息子。
採卵日に子どもの面倒をみに朝早く来てくれたにもかかわらず、なかなか夫の採精が終わらず、寒い中ずっと外で待たしてしまった母。
夫ではカバーしきれない、女ならではの悩みや愚痴につきあってくれた妊活仲間。
「私も一人っ子だけど寂しいと思ったことないよ」と声をかけてくれた一人っ子のみんな。
私にかかわってくれた全ての人たちに感謝したいです。
子どもが欲しい気持ちは今でも変わりありませんが、治療を辞めてからは以前のように荒々しい気持ちはなく落ち着いてきました。
このブログを一区切りに、妊活イラストレーターという肩書を捨てて、心機一転新たな気持でお仕事をがんばりたいと思います。
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